誰も管理したくないし責任なんて取りたくない

ある程度大きな企業になると、企業内のLAN(=イントラネット)上に各部門毎のWebサイトを開設することがある。 人事部のWebサイトでは異動通知やら住所変更手続きのやり方がどうだとか。 開発部のWebサイトでは「こんなの開発したから営業さん売ってきてよ」と言うための製品紹介用資料だとか自部門のエンジニアのための技術関連サイト上の新着情報やリンク集だとか。営業部のWebサイトでは業界関係紙の記事の紹介だとか路線検索エンジンへのリンクだとか。 Webサイトではなくいまだにクラサバ型のLotus Notesでやってたりするところもあるかもしれないが載っている情報は似たようなものだろう。

それらの企業イントラネット上のWebサイト群のなかには、更新されていない≒ほとんど機能していないWebサイトが少なくない。インターネット上の多くのサイトがそうであるように。

「なんで更新されてないんだ? 何も発信する情報は無いとでも言うのか?Webサイトの責任者はなにをやってるんだ!」と、その部署での会議などで問題視されて浮かび上がってくる実情は
「責任者はいるんだけど別な業務で忙しいんです」
「責任者は一応いるんだけどあんまりやる気無いんです
「責任者が産休を取ってそれっきりなのでそもそも責任者がいないんです
てなことだったりする。インターネット上の多くのサイトがそうであるように。

確かに、やる気の無い責任者に委ねられたWebサイトは不幸だし責任者不在は論外だ。 だからといって、インターネット上(=外部に公開される)の自社サイトならともかく 各部署ごとのイントラネット上Webサイトごときのために貴重な人員を割くことはできない。 (その企業での業務システムに直結していてそれが無いと日々の仕事ができないというような種類のイントラサイトなら話は別だが) 往々にしてイントラネット上Webサイトの責任者は通常業務と合わせて「兼任」ということになる。 そんなことを繰り返すうちにまた更新が停滞しWebサイトとしてまるで機能しなくなってしまう。 インターネット上の多くのサイトがそうであるように。

一番の根本原因はあけてみれば単純。誰もこれ以上管理するものを増やしたくないし責任も取りたくないのだ。管理したり責任を感じたりするのは日々の自分の本業=営業とか開発とか=だけで沢山だ! というのが組織に属する人間の感情というものである。 「なんとかして自分たちの部門のWebサイトをもっと活用していこうよ」という現場の思いも、その現場にいる張本人のこうした深層心理によって声に出す前に飲み込まれ、 結果としてやはりイントラネットWebサイトは放置され存在すら葬り去られる。 インターネット上の多くのサイトがそうであるように。

このように、実は心理的な要因のほうが大きい問題に対してそのことに気づかずに「ちゃんとした責任者を置いてどうの役割分担がどうの」といった組織力学的アプローチでせまろうとすればするほど結局はモチベーションゼロ状態の無限ループに陥ってしまう。

ならば、もっと心理的に受け入れられ易い別なアプローチを試してみるべきだろう。

そういう意味において、最近話題になっている「企業による社員ブログサイト」は実際使うユーザーの心理面で優位なアプローチと言える。 書き手は、好きなときに好きなように書く。ブログサイトの責任者(Webマスター)は、書き手に好きに書かせるだけ。「Webサイトを管理する」という肩肘張った「業務」というイメージはそこでは薄れる。

「好きに書かせたら無責任なことやどうでもいいこと書くやつもいるし、本業ほったらかしてブログにばかり時間をかけてしまう奴すらいるだろう」 と懸念する人もいるかもしれないが、たいていはそれを口に出した次の瞬間に 「そういえばWebじゃなくても普段の仕事でも無責任な仕事するやつやどうでもいい発言をするやつもいるし本業じゃないことに思わず力を入れちゃうことは自分でもあるなあ」という結論に至る。

業種業態にもよるが、一家言持ってる人はどの組織にも少なからず必ずいるものだ。 つまらないデメリットを気にしつつ閑古鳥サイトをもてあますよりもそういう人のアイデアを掘り起こすメリットを取るべきだろう。 極端な話、ことイントラネットであればそれこそ「昨日子供が生まれました」みたいな記事があってもかまわない。外部に公開されるサイトなわけじゃなし、コンテンツが何も更新されないよりはマシである。

(Sun Microsystems社の幹部が自ら書いて外部に公開しているブログにおいて) Sunに勤めているけれど、表明された意見はそれぞれ個人的なものであり、 事前にレビューされたものではないし、会社として彼らの意見に必ずしも同意しているわけではない、と記載されている。日本のIT企業も、こんなポリシーで、社員Bloggerが外に向かって自由に発言していくのを奨励してもらいたいものだと思う。
(CNET Japan Blog - 梅田望夫・英語で読むITトレンド: 公開企業の経営者もBlogが書きたい 2004/10 より)
ほんとにそう思う。こういうゆるやかなポリシーなら管理だの責任だのといった心理的負担は薄れる。

いきなりインターネット上でやる勇気も権限も無いそれができるのは社長クラスだけだ(笑)と言うのならそれはそれで、ひとまずイントラネット上のWebサイトでやってみるというのはどうだろう。

  1. 既存コンテンツは最低限を残して潔く捨て去り(どうせ大したコンテンツは無いか書き直せばすむ程度)、
  2. 代わりにMovableTypeなりNucleusなりをインストールし、
  3. 上の引用にあるSunの幹部ブログにあるポリシーの「会社として」のところを「○○部として」に直しただけのポリシーをかかげた上で、
  4. その部署内の社員に好きに使わせてみるところから始めてみる
というのは企業イントラネット内Webサイトのリニューアル手段としてあながち突飛なアイデアではない。

しかしその部門のトップ(40代以上の石頭上司)がそういうポリシーでのWebサイト運営というものを理解できるかどうかというハードルは依然残るわけだが。

その他参考記事:
企業のBlog利用6分類(eNatural.org 2004/8)

2004/10/13追記:
とかなんとかいっていたら、独立行政法人経済産業研究所とかいうところが blog形式でのサイトを公開したらしい。

IT@RIETI e-Life Blog
(最新記事へのリンクがあるアンテナはここ )
お役所にしては英断。

2004/11/10追記
See also:ビジネスブログの実例:社内(イントラブログ)>コラボレーション型

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コメント

初めまして、いなほです。ひよっ子ですが、初めてコメントさせていただきます。

>誰もこれ以上管理するものを増やしたくないし責任も取りたくないのだ。

これ、本当にそうですよね。自作業の優先順位が低くて、かつやりがいが無い作業だと誰だってそう思いますよね。

従来のイントラネットは、管理者が情報発信しても受け手の反応が薄いから、ますます虚しくなってモチベーションが落ちるのかもしれませんね。

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