MovableTypeのラインセンスがGPL化されることが意外と知られてない/理解されてないらしい

とりあえず結論ぽいものを箇条書き。

  • MovableTypeのバージョンアップ(ひとまずベータリリース)が発表されたが、巷のWeb屋さんの感想は「メニュー画面変わるのかあ」とか「プラグインの互換性どうなるんだろ?」といった話ばかりで、今年中にMT4のライセンスがGPL化されるということ(とその意味)に気づいている人が少ないらしい。
  • なんでSixApart日本法人が出すプレスリリースにはGPLのジの字も無いの?という話は大人の事情というものがあると推察される。
  • システム屋からすると「ふーん、ようやくGPLになりますかそうですか」程度のことなのだが、Web屋(デザイン寄りの人)からするとGPLという言葉の意味自体からして???なのかもしれない。
  • GPL化されるということは、Web屋さんはそのクライアントのWebサイトをMT4で作ってあげるときに、デザイン料カスタマイズ料手間賃その他をしかるべく頂戴するのは当然として、MT4それ自体の対価を100円とするか100万円とするかはWeb屋の自由でありSixApart社との金銭的契約などそこには無いということを意味する。なぜならそれがGPLというものだから。
  • それなら、Web屋さんじゃなく、自分で自分のサイトをつくる人々にとっては個人法人かかわらずゼロ円という選択を取るのが当然・・・かと思いきや、あえてそうしない=お金を払うほうを選択する=という大人の事情もありうる。
うーん、ほんとにこれで結論なのだろうかという自問には目をつむって先に進むとしよう。

今月初めにMovableType4(以下MT4)のベータリリース開始がその開発元のSixApart社からアナウンスされた。

シックス・アパートが、最新ブログ・ソフトウェア「Movable Type 4」を発表
Six Apart社日本法人ニュースリリース 2007/6
このニュースリリースに送られているトラックバックを眺めていると、 たとえばこんなエントリが↓
米ブログ・こめこめ便り: Movable Type 4 (2007/6):
... 引越しすると今のMovable Typeは、サーバー付属の無料ライセンスなんで新たにライセンスを購入しなければなりません。どうしようかなあと思っていたところでした。そして今回、 Movable Type4になるとライセンス料が大幅な値上げとなるんですが7月17日までの購入すれば無償バージョンアップができて21000円オフのキャンペーンをやるというのでまたまた揺れています。ライセンス買ってサーバー引越ししてブログをすべて独自ドメイン内でやるか今まで通りでやっていくかこの7月17日までにもう一度じっくりと検討しようと思います。
他にもざっと眺めてみると、総じて、ライセンス費用の話、使い勝手の話、後方互換性の話ばかりに言及されている記事が多く、ライセンスがGPL化されたバージョンも出る件について触れている記事はほとんど無い。それも無理も無い。SixApart日本法人から出された日本語のニュースリリースの文章にはGPLという単語はひとつも無いからだ。

一方、Six Apart米国本社のニュースリリースにはこんなことが書かれている。

Six Apart - Movable Type News - Movable Type 4 Beta: We're On A Missionより抜粋:
Later this year the open source version of Movable Type will be released under the GPL license.
筆者訳:今年の後半にはオープンソース版のMovable TypeがGPLラインセンスでリリースされます。
この件に関して正確に報道しているニュースソースは少ない。 Internet Watchの記事ですらGPL化について触れられてないし。 唯一、TechCrunchの記事(これも海外版の日本語訳だが)くらいのものだ。
Movable Type 4.0 ベータ、ローンチ―第3四半期にもオープンソース化へ (TechCrunch Japanese 2007/6)
Moveable Type 4.0は、2004年のMT 3.0のリリース以来のメジャー・バージョンアップとなる。しかもマーケットを震撼させるような発表があった。 SixApartは今年の第3四半期の終わりまでにMovable Typeをオープンソース化するという。
とあるとおり、マーケットを震撼させるような発表だったはずなのだが、日本ではほとんど言及されない不思議。

「オープンソース化する」ってなんのことだ?MTはもともとperl言語で書かれてるんだからもともとソースはオープンだろ? といったあたりも誤解の元になってしまいそうな気がする。ここで言ってる「オープンソース化」とは、「GPLライセンス化」という事柄とあわせると次のことを意味する。

  1. ソフトウェアのライセンスがGPLであるということはそのソフトウェアの使用にはお金がかからないということと事実上同じ意味である。「えっ?でもSixApart日本法人のニュースリリースには5万円に値上げって書いてるよ?」という話は後述。
  2. なお、「フリーソフトウェア」のfreeは無料の意味でのfreeではなく自由のfree=自由に使っていい、自由にコピーしていい、自由に改造していい=の意味が本来なのだが、現実問題として「無料」の意味あいのほうに注目してしまうのはしょうがないだろう。実際、事実上無料なのだし。
  3. オープンソース版のMT自体をを勝手に改造したバージョンを作って配布することも誰でも可能である。もちろんそれで商売してもよいが、その改造バージョンもGPL=誰でもコピーして第三者に配布可能=ということになるのでそれ自体の販売だけでは商売にならないだろう。ただしその改造バージョンに関するサポートもあわせたビジネスとなるとまた話は別。
  4. また、FAQになりそうな質問として「俺がつくったプラグインもGPLで公開しなきゃだめなの?」というものがありそうなので一応解答を書いておく。 「Q.我が社では、オープンソース版MTにショッピングカート機能を搭載できるプラグインを開発しました!。もちろんオープンソース版MTにこのプラグインを抱き合わせて100万円でライセンス販売した いと思います。この際、SixApart社に許可をとったりSixapartと金銭契約等を結ばなければならない義務はあるのでしょうか? また、我が社開発のプラグインもGPLとして公開しその自由なコピーと利用を誰にでも許可しなければならないのでしょうか?」「A.すべてNO。そのソフトウェアのライセンスがGPLである以上、ソースつきで提供するという前提であればコピーして売ろうと何かと抱き合わせて売ろうとその人の勝手である。また抱き合わせて売るそのプラグインのコードにまでGPLが波及するわけではないので自分でオリジナルにつくったプラグインに関する独占的な権利は失われない。」 つまりMTのソースそのものを改造するのとMTにあわせたプラグインをつくるのとでは話が似ているようで実は違うということ。
とまあ、もうちょっとビジネス上の深い話とか哲学的な話とかもあるのだが難しい話になりすぎるのでこのへんにしておく。

とにかく、TechCrunch日本版の記事にあるとおり、

MT 4に適用される新しいライセンス形態はMySQLなどに類似したものになる。有料版も引き続き提供され、これにはSixApartからの製品・技術サポートが含まれる。
ということなのだ。そう、サポートという単語がキーワードである。

「MT4のオープンソース版」と、「MT4の技術サポート込み有償版」。 どちらも、perlで書かれたソースコードの中身は一緒で、当然そのソフトウェアとしての機能も同じだろう。 違いは、「MTのバグ対処や機能拡張などで困った場合にSixApartの中の人が積極的に助けてくれる権利がついているかいないか」である。(追記:←断定的に書いちゃったけど、言い過ぎたかな。MTのOSS版と有償版とが実際にリリースされて違いを確かめることができるようになるまでは誰にもわからないといえばそのとおり。6Aの中の人が具体的に何らかの解説をしてくれることに期待。)

「ソフトウェア」は本社から供給するからキミたち現地法人はサポートを売れ!せめて自分たちの食いぶちはそれで稼げ!」というセリフはソフトウェア企業がその本国以外の海外現地法人の社員に対して下す指令の定番である。そう、SixApart日本法人の中の人は、有料サポートつきバージョンのMTを買ってもらわなければ自分の給料に響くのだ。これはSixApartのようなベンチャーに限らずOracleでもSiebelでもPeopleSoftでも規模の大小はあれども基本は似たようなものである。

かくして、SixApartの中の人としては、オープンソース版の件についてはあんまり触れずに「これからもサポートして行きますんでよろしくお買い上げください」というニュアンスで活動するわけである。

さて、カラクリがわかったところで、Web屋の立場からすると「なるほど!今後は遠慮なくオープンソース版を使わせていただくぜ!わかんないことあったら自分でソース見て調べるなりググるなりすればいいんだし!」と考えがちであるが、必ずしもその判断でいいとは限らないのが大人の事情というものである。

もともと、SixApart社はProNetという名称でMovableTypeを積極活用してくれるWeb屋さんとのアライアンスみたいなことをやっていた。 が、こんな感じ↓で「やーめた」と言われるケースもあったようだ。

当社は本日をもってProNetを退会いたします / ビジネスブログ『アイタス営業日報』 (2007/2)
Movable Type 4発表で改めて感じるシックス・アパート社への不信 (2007/6)
なるほど。その「サポート」の体制に疑問を感じたということらしい。

ただ、SixApart日本法人の肩を持つわけではないが、海外製ソフトウェア会社の日本現地法人のサポート体制なんて実はどこも似たり寄ったりである。Oracleのようにそこそこ歴史も実績もあって超勝ち組なところでさえ、日本法人のサポートでは頼りないということになってシリコンバレーの本社からの直接サポートを受けているケースはまったく珍しくない。日本のソフト業界の人手不足は相変わらずであり、少ない予算と海外に比べて高い人件費もあいまって日本法人を設立しても社員数がちっとも増えない、増えても質があがらない、というケースは多々ある。しょーがないので本社から外人さんを連れてきてサポートさせ、日本法人の社員は単なる通訳でしかないというパターンもまたよく見かける。

えてして慢性的人手不足であることに変わりは無く、また、そもそもソフトウェア製品の供給元が提供するサポートというものは街のスポーツクラブと同じで、その会員がある日集中的に来館したらトレーニングマシンもプールもフィットネススタジオも全て芋洗い状態になって「金返せ」的な事態になるのも必然のビジネスモデルなのだ。

ソフトウェア製品のサポートとかけて街のスポーツクラブと解く。そのココロは、金払うだけで使わない人がいてこそ儲かるビジネス。保険も同じ。

これが海外製ソフトウェア会社の日本法人におけるサポートビジネスとその体制の一般的な風景である。なおSixApart日本法人も絶対そうだとここで断じるつもりはまったくございませんので誤解なきよう。あくまで一般論。

なんてことを書くとますます「サポート」なんていらない、オープンソース版でがんばるぜ頼むぞグーグル君的な気持ちになりがちだが、Web屋さんの気持ちはともかくそのクライアントさんの気持ちはそうではないかもしれない。

「我が社はMovableTypeの開発元であるSixApart社の公認パートナーです。ほら、ここのリストに我が社の名前もあるでしょ!当社としても有償サポートつきバージョンで提案いたします!ご安心ください!」といったセリフは、 Webサイト構築案件のコンペの場でのWeb屋さんの営業担当者の売り込み文句として効き目が高いかもしれない。 クライアントがお役所、またはクライアントのキーマンがお役所的な保守体質のオジサンの場合には特にそうかもしれない。 「サポート」の実態がどうであるかも知らず。

また、クライアントがそうでなくても、Web屋さんの中のあんましわかってない幹部クラスのおっさんがそういう保険を求めて「サポートつき有償版でいけ!」という方針を立ててしまうかもしれない。 「サポート」の実態がどうであるかにかかわらず。

そういえば、「サポート」という単語も「Web2.0」という単語も、要する言った者勝ちであるという点ではいい商売なんだよなあ、とかなんとか大した脈絡も無くそんなことを考える今日この頃。

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