天気予報のAPI(XML)配信まわりの状況が医薬品ネット販売の問題と似てきている気がする

年に1回か2回のペースで繰り返す感じの話ですが少々酔った勢いで気にせずGO。知ってる方はスルーでどうぞ。

ついこないだ、こんな記事がでた。

日本気象協会など、「天気予報API」を非営利目的限定で無償提供 (Internet Watch 2009年5月)

これは要するに、

  1. 本来なら月額数万円で提供している天気予報情報のXML形式での提供サービスを、
  2. 販売促進のため(?)に限定的に無償で提供するので希望者は応募してね
ということである。

さっそく、APIを使ったサンプルウィジェットを試してみた。 ウィジェットの見た目のクオリティはどうでもよくて(サンプルだし)、 問題は、APIの中身である。

ウィジェットを稼動させつつパケットを観測してみたら、こんな通信がなされていた。 (一部省略&伏字してます)

(HTTPリクエスト)
GET http://w001.tenkiapi.jp/dc05a986240dd621e2d695a3a89f11906dbcd807/daily/?p1=4410&p2=today HTTP/1.1
Referer: app:/Weather.swf
x-flash-version: 10,0,22,87
User-Agent: Mozilla/5.0 (Windows; U; ja-JP) AppleWebKit/526.9+ (KHTML, like 
Gecko) AdobeAIR/1.5.1
Host: w001.tenkiapi.jp

(レスポンス)
HTTP/1.1 200 OK
Date: Mon, 18 May 2009 **:**:** GMT
Content-Length: 484
Content-Type: application/xml
Server: Apache
X-Powered-By: PHP/5.2.9

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<forecast areaCode="4410" date="2009-05-18" time="11:00:00">
 <daily dateName="today" date="2009-05-18">
  <wDescription telop="111"><![CDATA[晴]></wDescription>
  <temp min="" max="27" />
  <probPrecip time="00-06" precipCode="" prob="" />
  <probPrecip time="06-12" precipCode="" prob="" />
  <probPrecip time="12-18" precipCode="0" prob="10" />
  <probPrecip time="18-24" precipCode="0" prob="10" />
 </daily>

RESTでXMLを取得するタイプの、最近よく見かける一般的なAPIのようだ。 URLの途中の40バイトの16進数がいわゆる「API利用キー」なのだろう。 別なネットワーク上で別のマシンにインストールしてみたけど APIキーは変わらなかったので、インストール単位ではなく 開発者側の利用申請の単位で割り当てられるキーと思われる。

なお、「サンプルソフトの逆アセンブルとかはすんなよ」的なことが注意書きに書いてあったが、 サンプルソフト自体を触った覚えはまるでない。途中のスイッチで通信をキャプチャしただけなので念のためご了承ください。

なんのこたあない。「晴れ」「雨」とか、最高気温、最低気温、6時間ごとの降水確率。つまり、気象庁のホームページや局番なしの117で聞けるのと同じレベルの、気象庁予報部という行政機関が広く公表した情報そのものにすぎないじゃないか。

こんなもののどこに、1契約あたり月額数万円の付加価値があるというのだろう?
(地震速報とかナントカ指数とかそういう特殊モノは除く。ここで言っているのはあくまでも「今日/明日/週間の一般的な天気予報の情報」です)

むしろ、「非営利なお試し」でよければお天気の森田さんがやってる会社が出しているXML形式の天気予報(の一部)を使うほうが、意味不明な審査などがまったく無くて、お勧めである。いやまじで。

天気予報をRSSでお届けする「ひとくち予報 in Feed」
http://feedproxy.google.com/hitokuchi_4410
(↑FirefoxやIE7で見ると、Atomフィードとしてレンダリングされて見えてしまうので、ブラウザの「ソースを見る」で見てみましょう。上のAPIとほとんど変わらない形式で天気予報の情報が載っている部分が見えます。下記参照)
(天気予報のXMLの部分は最初に紹介したAPIとほとんど変わらないの図。
タグ名しか変わらん。日付が違うのはこれを取得した日が少し違うだけです。)

<wm:forecast term="kyo_asu" announce="2009-05-19 17:00:00">
  <wm:area>
    <wm:prefecture>東京都</wm:prefecture>
    <wm:region>東京地方</wm:region>

    <wm:city>東京</wm:city>
  </wm:area>
  <wm:content date="5/20" wday="Wed">
    <wm:weather>晴れ</wm:weather>
    <wm:temperature unit="℃">
      <wm:max>27</wm:max>
      <wm:min>18</wm:min>

    </wm:temperature>
    <wm:rainfall unit="%">
      <wm:prob hour="00-06">10</wm:prob>
      <wm:prob hour="06-12">0</wm:prob>
      <wm:prob hour="12-18">0</wm:prob>
      <wm:prob hour="18-24">10</wm:prob>
    </wm:rainfall>

  </wm:content>
</wm:forecast>

それにしても、初期費用10万円からでリクエスト数制限のあるこのAPIの利用料金って、サーバー運用費用?回線費用?アプリの開発費? それとも、利益?まさか。財団法人という立場で必要以上の利益を取るのはまずいっていうのは漢字検定協会の件がいい例なわけで。

FeedBurner使えばいいじゃんとか言いたいのではない。膨大な量の気象衛星画像の解析データとか言うんならいざしらず、天気予報のAPI(XML)が提供する情報は、1地点あたり数百バイトのXMLにすぎない。それが1都道府県あたり2地点か多くて4,5地点の計200地点にも及ばない程度。今日明日の天気予報&週間天気予報という一定のフォーマット。更新頻度は日に数度の決まった時間。そして情報の中身を考えるのは自分じゃなく気象庁。

そんな程度の要件の情報配信システムに「月額数百万の運用費がかかかるんですよ奥さん」とか言ってると、楽天やYahooやはてなやmixiやニコニコ動画その他各種のポータルサイトをやってるようなレベルの連中の失笑を買うんじゃなかろうか。実際本当に、システム規模、複雑さ、運用面、すべてからみてもたいした額にはなるまい。

長々と傍証を挙げてしまったが、要するに、気象庁のWebサイトで出ているHTML形式の天気予報を、XML形式でもそこに配置し、それにあわせて必要に応じてサーバー増設するだけのことで、それは税金でまかなえないような額ではまったくないはずってことでファイナルアンサー。(or サーバ増設ではなくCDN業者にアウトソーシングでも可)

なお、受益者負担の考え方があるべきだとか言ってる人は、いまだにオープンリールの磁気テープをバイク便で運んでいたり、64KのINS回線を速い!とか言いながらありがたがって使っていたりするのだろうか。その時代ならば「受益者側が少なくともそういう実費ぐらい負担しろ」という話はわかるけどな。それから受益者負担に関するよくあるたとえが「高速道路だって利用料払うのが当然」というやつだが、このGWで絶賛大渋滞の「ETC/休日/1000円」によって失った高速料金と得られた経済効果とどっちが大きいと考えるのかと。それがインフラってもんだろ。 そういえば、高速道路は中途半端な値下げより無料化が一番経済効果が高いという試算結果を国土交通省が握りつぶしていたのを察知したのは民主の馬渕議員だったそうで相変わらずGJ。 dankogaiのこの書評でも同様のことになっている。

農作業と天気予報は密接に関係している。だからこそヤンマーディーゼルは「ヤン坊マー坊 天気予報」としていつまでたってもCMを出し続けている。 さっき行ったコンビニでお兄さんが首からぶら下げていた分厚いタッチパネルは発注端末である。商品ごと直近の売り上げ状況とともに天気予報が表示される。 天気と客足は密接に相関するから商品の注文数の見極めに天気予報は欠かせない。 スーパーマーケットでもやはり天気予報が重宝される。日持ちしない肉や魚を扱う業種では雨で客足が鈍ることによる商品廃棄ダメージを無視できない。この悩みは外食産業も同じである。 トラックなども天気によって配達スピードが変わってしまいがちなので予報に応じた調整が必要だ。寒冷地ではスタッドレスタイヤやチェーン等の準備を怠るとと事故ってしまう。逆に天気がいいのにそんなのつけてると燃費が悪くなる。

このように、今日、明日、向こう1週間の天気予報というものは、世の中の身近な経済活動と意外なくらい密着しているインフラサービスである。

んなこたぁ誰でもわかっているからこそアメダスだの衛星だの気象台だのスパコンだので一生懸命予報を作っているわけだ。それが天気予報というサービスのQCDで言うところのクオリティとコストの部分。税金でまかなわれている貴重なC(コスト)で気象庁がなんとかがんばっている。 がしかし、D(デリバリー)の部分で、なぜか変な財団法人が2個ほど挟まっている。なんなのこいつら?

そんな奴ら無視して、気象庁(の予報部)は、自分の出す予報のうちのせめて「今日明日の天気と週間天気」といった一般的な予報は、HTMLはもちろんXMLで自分のWEBサイトで何の制限も無く即時公表すべきである。その使われ方が営利目的か非営利目的かは問題ではなく、どんな形で使うかはユーザーが決め、工夫し、より広い範囲の競争原理を働かせるべきだろう。それが情報インフラというものだ。法律的、技術的、経済的にみてこれが不可能な理由はどこにもない。なんでやらないのってそりゃ、財団法人日本気象協会や財団法人気象業務支援センターや既存の民間の気象情報会社に気を使っていらっしゃるのがミエミエすぎる。 なお、既存の気象情報企業は気象庁のWebサイトでHTMLで天気予報を流そうとしただけで「民業圧迫」と騒いだ前科もある。

  1. 財団法人日本気象協会は、生き残りたければ、いち民間気象会社と同様に自前の気象予報やあるいは気象庁発表の天気予報になんらかの付加価値をつけたうえで商売することに専念すべきだろう。ただし財団法人の立場での利潤の追求ってのは漢字検定協会の一件からみてもかなり微妙だけどな。 とにかく、どうにかして税金で作られたはずの気象庁発表の情報を右から左にそのまんま流すだけのことで金取れる状況を当たり前の既成事実にしたいのだろうが、それは税金でやってる気象庁が無料でやれちゃう(やるべき)ことなのでジタバタせずにご退場いただきたい。
  2. 財団法人気象業務支援センターは、気象予報士の資格試験の取り回しとかそういうのだけをやってればいいんじゃないの?気象情報の配信業務そのものは、通信技術の進歩によって支援センターのような専門組織の必要性を失っている。役目を終えたのだ。おつかれさん。
  3. その他もろもろの、気象庁の予報を再販するだけのビジネスに頼っている民間気象情報会社は、今後も独自の付加価値を生み出せないのであれば、業界再編なり淘汰なりされるべきだろう。それは電気冷蔵庫の普及によって衰退した氷屋や、携帯電話の普及によって消えた公衆電話みたいなものである。

話がとぶが、既存の財団法人&民間気象情報会社&気象庁という行政機関のトライアングルがかもしだすナアナアな関係は、例の、医薬品のネット販売禁止の状況と似ているところがある。

薬剤師団体と厚生労働省は、「医薬品は専門家(薬剤師)が対面で販売するものである」という「もうそういう路線で決まった既成事実」を錦の御旗にして勝てば官軍モード。対する楽天とかケンコーコムとかは負ければ賊軍。っていうか飯が食えなくなりかねない。そのくせコンビニでは薬剤師でもないのに「登録販売業者」としてパブロンもバファリンも買えるようになるそうだ。しかし登録のための試験を受けるのは店長くらいで実際に客に応対するのはただのバイトの高校生という現場が眼に浮かぶ。要するに客と薬剤師の対面でも客とネコの対面でもそれは「対面販売」なのだというオチ。

一方、気象関係の財団法人&吹けば飛びそうな民間気象会社は、「気象庁が出す天気予報をコンピュータ的に使いやすい形=XML=で得るには金がかかるものなのだ」という「そういうものなんだよ的な既成事実」を作り出そうとしている。実際はHTMLもXMLも大差ないどころかXMLのほうが作りも見た目も単純ですらあるのにね。

日経ビジネスの記事に 対立の構図は、「薬剤村」vs「ネット村」。無論、薬剤村には、法令を作った厚労省も含まれる。 というのがあったが、これを天気予報に関する構図にあてると、

「わかってて傍観する気象庁と、気象庁の予報を再販する既得権を守りたい財団法人と、策も発展も無くやはり気象庁の予報を再販するだけの民間気象情報会社」
vs
「....」(Web、IT系、その他気象情報のユーザー業界の人が誰もいない。笑)

という状況。医薬品ネット販売禁止の是非の一件はネット側の「出遅れ」があったことは業界の誰もが認めることだろう。どこか似たような歴史が、また、繰り返されようとしている気がしてならない。

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