もしも天気予報がXMLだったら − その2 できない理由
(前回からの続き) しかし、気象庁が天気予報をXMLで配信するようになる可能性は、実は低い。
2002年6月、気象庁は、気象庁のWebサイトで天気予報の掲載を始めた。 XML形式ではなく、ごく一般的なHTML形式のホームページだ。 このとき、気象情報会社の各社から「官による民業圧迫にあたる」 といったクレームがあがり、ちょっとした騒動になったのだ。 結局は気象庁のWebサイトから気象情報各社へのWebサイトへのリンクも張るということで決着した。
- 気象庁の天気予報ネット提供は「民業圧迫」 事業者が懸念(mainichi interactive 2002/6)
-
気象庁のトップページ
(ページ中ほどに未だにポツンと残る「民間の気象情報サービス」というリンクがこの騒動の顛末を物語っている)
しかし民間の気象情報会社ならまだ話がわかりそうだからいい。 もっと問題なのは、天下り官僚による組織の存在だ。
Yahoo!天気にある天気予報は次のような流れで作られている。 (以下はあくまで筆者の予想ではあるが、たぶんあたっているだろう)
- 各地の気象台の予報官が天気を予測して気象庁に報告する
- 財団法人 気象業務支援センターが 天気予報データをオンライン配信する
- 大手の民間気象情報会社や、財団法人 日本気象協会が配信されたデータを受信する。 (全国データだと月間100万円くらい気象業務支援センターに払う。詳しくはこちら)
- 日本気象協会がYahoo向けにデータを整形して配信しなおす。 (もちろんYahoo!と日本気象協会とはこの情報提供にまつわるなんらかの金銭契約があるかもしれないし、無いかもしれない)
- Yahoo!天気(の国内の天気)のできあがり
なお、お察しのとおり、財団法人 気象業務支援センターも財団法人 日本気象協会も 気象庁の官僚の天下り先である。
前回書いたように、天気予報のXML配信が実現すると、気象庁発表の正式な天気予報をもとにしたソフトウェアをYahooのような大きな企業だけでなく、誰でも自由に作ることができるようになる。 気象ビジネスの裾野が気象予報士の制度の導入のときなんかよりよほど大きく拡大するだろう。
もちろん、民間の気象情報会社も件の財団法人も、は相当な大打撃を受けることになる。 しかし、だからといって気象庁による天気予報のXML形式での無償配信は すべきではないのだろうか? いいや。もちろんやるべきだ。 気象庁発表の天気予報はどう見ても立派な公共財であり、 日常生活はもちろんあらゆる経済活動に非常に大きな影響を及ぼす情報である。 天気予報はできる限り多くの形式で広くかつ無償で公表されるべきものだ。そのために税金でやってるんだから。 気象庁による天気予報のXML形式配信は「官による民業圧迫」などではなく単なる「技術の進歩」であり、それによって起こる淘汰は市場経済の必然ととらえるべきことだ。
天気予報はすでにある程度定型化されているのでそのXML形式の仕様を策定するのにそう手間も費用もかからない。 予報官が予想した天気予報をXMLに変換するソフトウェアも難しいものではないだろう。 天気図や気象衛星画像はどうするんだと言うかもしれないが、 画像ファイルをWebサーバに置いてそのURLをXML上に書けば事足りる。 XMLデータを配信する方法も、通常のWebサイトと同様の設備があれば十分。 心配があるとすれば、XMLデータを求めるアクセスが殺到してWebサーバがパンクしがちになりそうなことだが、データ自体は小さなものだから技術的な工夫次第でどうにでもなる。 HTTPを使ったWebサーバーからの配信に限らず、SOAPを使ったWebサービスを使うことも十分可能だろう。
つまり、法律的にも技術的にも経済的にも、気象庁それ自体の存在意義からしても、 気象庁自らの手で天気予報のXML配信が無償でできない理由は、無い。
郵政省とその関連機関である通信総合研究所が日本標準時を短波ラジオで放送するアンテナを福岡と福島にひとつずつ建設することで、 電波時計という新しい市場が生まれた。 無料で誰もが自由に利用できるインフラをお役所がつくり、そこに新しい製品市場が生まれるという、まさに理想的な流れだ。
しかし気象庁とその天下り先である財団法人気象業務支援センターに、 いま、そうした行動をはたして期待できるだろうか。
See Also:
天気予報をXMLで提供すると気象庁が発表してから半年が経った(2005/7)
天気予報のXMLはFTPでGETできる。ただし月額10万円超(2005/8)
