楽天市場とは、集客機能つきのASP(アプリケーションサービスプロバイダ)である。ただ、そんなヨコ文字並べられてもわからないよという人のほうが世の中多いので仕方なく「要するにテナント料で儲ける不動産屋です」みたいな比喩が広く用いられる。
ASPという意味においてはYahoo!オークションもGMailもセールスフォースドットコムも同類である。
それぞれにおける利用料金は無料だったり数百円だったり数十万円だったり様々。
さて、「楽天税」とは、楽天市場がその店舗に課金するシステム利用料や楽天ポイント/楽天アフィリエイトの原資、そして楽天市場上の各ページや公式メールマガジン上に広告掲載するための広告出稿料などをすべてひっくるめた俗称である。
その楽天税の金額を評価するに当たって重要なポイントは、純粋なシステム利用料=ASP利用料=と、集客機能利用料=広告出稿費用、とを分けて考えることだ。システム利用料の課金は避けて通れないが広告を出稿するかどうかは出店者の判断次第である。中には楽天市場に出店すること自体に広告効果があると勘違いしている人すらいるようだがそれは店舗数が数百しかなかった4、5年前の話であって店舗数が1万を超えている現状ではおとぎ話に過ぎない。そして楽天市場以外の場所で商売したところで同じ商売である限りは広告費用が必要なくなるはずがないという当たり前の現実をも認識しておくべきである。したがって、この記事でいう「楽天税」は「楽天市場で店舗を運営するための純粋な情報システム費(≒IT予算)として楽天に支払う金額」と考える。以下は、楽天の公式ページ上に説明されている数字をもとにしたごく簡単なシミュレーションである。なお、以下の点に注意。
- 楽天ポイントの付与料は情報システム費ではなく広告費用(販促費)と捉えるべき面があるが、店舗の意思にかかわらず自動的に課金されてしまう事情があるため一応計算している。
- 楽天アフィリエイトについても同様だが、こちらはアフィリエイト報酬とアフィリエイトシステム利用費とがそれぞれ明確に計算式があるため、アフィリエイトシステム利用費のほうのみをシステム利用料に含めている。
- R-Mailとよばれるテキスト形式のメールマガジンは20万通送信まで無料である。がしかし、テキストだけでなく商品画像を掲載できるHTMLメール形式のほうが効果は抜群に高く、店舗運営には欠かせない。したがってR-Mail Plusを多用する前提で計算している。その意味ではR-MAILの利用料はシステム費用ではなく広告費用として捉えるべきかもしれないがとりあえずシステム費用と考えることにする。
- 他にも注文データ等のCSV形式でのダウンロードなどの各種の機能についてもいちいち費用がかかるのだが細かいので省略。
※すべて月毎の数字。楽天スタンダードプランを想定。
| | 店舗名 | ショップX | ショップA | ショップB | ショップC | ショップD | ショップE |
| A1 | 通常購入件数 | 60 | 200 | 300 | 300 | 600 | 1500 |
| A2 | 通常購入の注文単価 | 3,500 | 4,000 | 5,500 | 10000 | 11000 | 10000 |
| A3 | 通常購入売上高(A1xA2) | 210,000 | 800,000 | 1,650,000 | 3,000,000 | 6,600,000 | 15,000,000 |
| B1 | オークション開催回数 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
| B2 | オークション平均落札価格 | 3,000 | 3,000 | 4,500 | 6,000 | 6,500 | 7,000 |
| B3 | オークションあたり出品数量 | 15 | 20 | 20 | 20 | 10 | 10 |
| B4 | オークション落札総件数(B1xB3) | 60 | 80 | 80 | 80 | 40 | 40 |
| B5 | オークション売上高(B2xB4) | 180,000 | 240,000 | 360,000 | 480,000 | 260,000 | 280,000 |
| C | 総売上高(=課金対象額)(A3+B5) | 390,000 | 1,040,000 | 2,010,000 | 3,480,000 | 6,860,000 | 15,280,000 |
| D | 平均バスケット単価 C/(A1+B4) | 3,250 | 3,714 | 5,289 | 9,158 | 10,719 | 9,922 |
| E1 | 適用料率(売上100万まで分) | 4.0% | 4.0% | 4.0% | 4.0% | 4.0% | 4.0% |
| E2 | 適用料率(売上200万まで分) | 3.0% | 3.0% | 3.0% | 3.0% | 3.0% | 3.0% |
| E3 | 適用料率(売上300万まで分) | 3.0% | 3.0% | 3.0% | 2.8% | 2.8% | 2.8% |
| E4 | 適用料率(売上500万まで分) | 2.8% | 2.8% | 2.8% | 2.8% | 2.8% | 2.8% |
| E5 | 適用料率(売上1000万まで分) | 2.8% | 2.8% | 2.8% | 2.6% | 2.6% | 2.6% |
| E6 | 適用料率(売上3000万まで分) | 2.6% | 2.6% | 2.6% | 2.4% | 2.4% | 2.4% |
| F1 | 従量課金システム利用料(売上100万まで分) | 15,600 | 40,000 | 40,000 | 40,000 | 40,000 | 40,000 |
| F2 | 従量課金システム利用料(売上200万まで分) | 0 | 1,200 | 30,000 | 30,000 | 30,000 | 30,000 |
| F3 | 従量課金システム利用料(売上300万まで分) | 0 | 0 | 300 | 28,000 | 28,000 | 28,000 |
| F4 | 従量課金システム利用料(売上500万まで分) | 0 | 0 | 0 | 13,440 | 56,000 | 56,000 |
| F5 | 従量課金システム利用料(売上1000万まで分) | 0 | 0 | 0 | 0 | 48,360 | 130,000 |
| F6 | 従量課金システム利用料(売上3000万まで分) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 126,720 |
| F7 | 月額固定システム利用料(楽天スタンダードプラン) | 50,000 | 50,000 | 50,000 | 50,000 | 50,000 | 50,000 |
| F8 | システム利用料合計(F1からF7) | 65,600 | 91,200 | 120,300 | 161,440 | 252,360 | 460,720 |
| G1 | 楽天スーパーポイント付与料率 | 1.0% | 1.0% | 1.0% | 1.0% | 1.0% | 1.0% |
| G2 | 注文件数のうち楽天会員登録してる人の注文件数の率 | 80.0% | 80.0% | 80.0% | 80.0% | 80.0% | 80.0% |
| G3 | オークション落札件数のうち楽天会員登録してる人の注文件数の率 | 95.0% | 95.0% | 95.0% | 95.0% | 95.0% | 95.0% |
| G4 | 通常注文による楽天スーパーポイント付与料AxG2xA2xG1 | 1680 | 6400 | 13200 | 24000 | 52800 | 120000 |
| G5 | オークションによる楽天スーパーポイント付与料B4xG3xB2xG1 | 1710 | 2280 | 3420 | 4560 | 2470 | 2660 |
| G6 | 楽天スーパーポイント付与料合計(G4+G5) | 3390 | 8680 | 16620 | 28560 | 55270 | 122660 |
| H1 | 楽天アフィリエイト料率 | 1.0% | 1.0% | 1.0% | 1.0% | 1.0% | 1.0% |
| H2 | 総売上高のうちアフィリエイト成果対象の率 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 30.0% | 30.0% | 30.0% |
| H3 | 楽天アフィリエイト成果報酬(CxH2xH1) | 780 | 2,080 | 4,020 | 10,440 | 20,580 | 45,840 |
| H4 | 楽天アフィリエイトシステム利用料適用料率 | 30% | 30% | 30% | 30% | 30% | 30% |
| H5 | 楽天アフィリエイトシステム利用料(H3xH4) | 234 | 624 | 1,206 | 3,132 | 6,174 | 13,752 |
| J1 | R-Mail Plus(HTMLメルマガのこと)サービス利用料基本料金 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 |
| J2 | R-Mail Plusによるメール1通の課金 | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.5 |
| J3 | R-Mail Plusによるメルマガ発行回数 | 4 | 4 | 4 | 8 | 8 | 8 |
| J4 | R-Mail Plusによるメルマガ1回あたり配信件数 | 1,000 | 3,000 | 10,000 | 20,000 | 50,000 | 100,000 |
| J5 | R-Mail Plus利用料従量課金小計 | 2,000 | 6,000 | 20,000 | 80,000 | 200,000 | 400,000 |
| J6 | R-Mail Plus利用料合計(J1+J5) | 12,000 | 16,000 | 30,000 | 90,000 | 210,000 | 410,000 |
| K1 | 楽天に支払う総額、いわゆる楽天税(青色と黄色) | 82,004 | 118,584 | 172,146 | 293,572 | 544,384 | 1,052,972 |
| K2 | 総額で見た楽天税率 K1/C | 21.03% | 11.40% | 8.56% | 8.44% | 7.94% | 6.89% |
| K3 | 情報システムの利用料だけで見た場合の楽天に支払う総額(つまり青色のみ) | 77,834 | 107,824 | 151,506 | 254,572 | 468,534 | 884,472 |
| K4 | 情報システムの利用料だけで見た場合の楽天税率 K3/C (≒売上高対IT予算比率) | 19.96% | 10.37% | 7.54% | 7.32% | 6.83% | 5.79% |
週刊東洋経済2006年9月2日号(2006年8月28日発売)には、楽天市場の店舗の四半期あたりの平均売上高が607万円という数字が掲載されていた。つまり月商で約200万円が平均であり、上の表で言うとショップBがそれにあたる。そしてショップBの「K4:情報システムの利用料だけで見た場合の楽天税率(≒売上高対IT予算比率)」の値は7.54%。東洋経済が公開データから逆算で試算した楽天税率は9.3%。東洋経済が店舗への直接取材で聞き取れた数字も8%から10%。7.54%との差は広告費を含めるか否かの違いと見ればここのシミュレーションも週刊東洋経済の数字もそう大きくズレてないと推測できる。
さて、この金額が高いか安いかという話だが、本当は「Yahooショッピングだとどうなる?」「すべて自前で自作したシステムだとどうなる?」とかいう比較があるべきだと思うのだが、ここまでで疲れてしまった(爆)。記事のタイトルで期待した人申し訳ないっす。詳しい続きはまた今度ということで。
ただしひとついえることは、
- 商品ページ管理機能
- 商品検索機能
- 買い物かご機能
- オークション機能
- 受注管理機能
- 配送管理機能(配送伝票を自動生成するとか業者が出す配送番号と注文データを結びつけてなんかあったときすぐ追跡できるようにするとか)
- 決済機能(クレジットカードや銀行などの決済システムとの連携とか)
- メルマガ機能(テキストメール、HTMLメール両方。配信だけでなく、商品データベースから商品を選びながら原稿を作成できるいわゆる編集機能も含む)
- アクセス解析機能(汎用的なWebサーバログ解析でなく、メルマガの発行で何人来たとか、「このURL」ではなく「この商品のページ」へのアクセスがいくつでそのうちいくつが購入に至ったかとかまでわかるような)
- 上の機能すべてにわたってある程度のセキュリティを確保しうる機能
といった機能をすべて網羅するシステムを自前で調達ないし構築しかつそれを維持するとなると、構築費とか運用費(レンタルサーバー代etc)はさておき(さておけるほど小さくないが)、どう考えてもシステム専任の人間が一人以上は絶対に必要となり、たとえばその人が年収300万だとして(本当はそんな金額でSEを雇えるはずがないけど百歩譲って)、単純計算で300万/12ヶ月=25万円/月の金額が必要になるということで、そのあたり上の表の金額と比べて考えていただきたく。
また最近はいろんなオープンソースソフトがあるしアクセス解析だってGoogleAnalyticsが無料で高機能だしいやでもそういうのをまとめて運用する人件費ってのが大きいんだよとかmixiのシステムもバタラさんとかいう天才インド人がほぼ一人で作り上げたらしいから天才が一人いれば状況が一変するとかとかいや楽天税が高いか安いかの問題じゃなくて楽天市場が後だしジャンケン的に利用料を勝手に値上げすることが問題なんだとかでもそれは楽天側が一方的に利用規約を変えることができるとはっきり書いてある規約に同意した上で出店申込をした出店者が悪いんでしょとかそもそも自分の売上の多くを楽天市場に依存すること自体がビジネスのリスクマネジメントができてないとかなんとか言ってる間にYahoo!もamazonもは誰にも嫌われない戦略でわれわが道を行ってていいよねとかいろんな話がやまほどあうrのだがうぉもう眠いおやすみなさい。
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追記:
月商40万にも満たない弱小ショップの例をショップXとして追加してみた。
で、「平均の月商が200万」の話だが、解説するほどでもないのだが「平均値のトリック」というものが当然ある。
楽天市場には100店舗しかないと仮定しよう。うち5店舗が月商3000万の売れっ子。5店舗が月商500万でまあまあ。10店舗が月商80万。残り80店舗が月商30万とすると、1店舗あたりの平均月商は207万円となるのだ。あらふ不思議! 超売れてる少数とジリ貧の大多数という2:8の法則(今風に言うとロングテール?)は現実であることを忘れてはいけない。
それでもなぜまだそんなにたくさんの店舗があるのかというと、田舎町の「駅前シャッター通り消店街」の方々がワーキングプア脱出の起死回生を狙ってネット通販に乗り出そうとしているけど結局は楽天市場のいち売り子という名のワーキングプアのままですというケースや、目が泳いでしまった中小企業の社長さんの肝いりで始めたものの儲からず、でも鶴の一声で始めたことだからやめるにやめられずまあネット以外の本業で利益でてるから楽天市場の店舗のほうはダラダラ続けてますみたいなケースが多々あるんだろうという筆者の想像はあくまで想像です。もちろん「圧倒的においしいチョコレートケーキ屋さん」とか「すばらしいワインの世界を教えてくれるワイン屋さん」とかそういう店舗の中の人がおいしいケーキ作りの作業に集中したりワインの目利きに集中したりしつつコンピュータ関係の難しいことは外部のサービス=楽天市場=に任せることによって結果的に店舗も楽天もたくさん儲けることはビジネスの理想とされるWin-Winの関係を実現しているということなのですから大いに結構で健全なことです。